『My Favorite Things 』

dsc09048dsc09002東京都庭園美術館で開催中の現代アートの巨匠クリスチャン・ボルタンスキーの東京での初個展「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち」へ。庭園美術館は、1933年に朝香宮邸として建築されたアール・デコ様式の絢爛たる建物。戦後は政府の首相公邸や国賓の迎賓館に使用され、1983年からは美術館として公開されている。

dsc09043・本館1階 『さざめく亡霊たち』
「どんな場所もそうであるように、歴史がある場所にはそこに関わる人たちの亡霊が住んでいます」
ボルタンスキーが感じたという亡霊の存在。その存在を我々に伝えるように数多くの場所に亡霊からの声を配置。素晴らしいアールデコ調の家具や調度品が配置されている屋敷の内部から突然聴こえてくる亡霊のささやき。「声」と建物とのコラボレーションというインスタレーショョン作品です。

dsc09016・本館2階『影の劇場』
暗い部屋の中で骸骨やコウモリの切り絵がゆらゆらと動き、それが影絵となる光と影による幻想的なインスタレーション。死に対する様々な想像力とも繋がるユーモラスな作品でした。

1012christian-boltanski05_666・本館2階『心臓音』
鼓動に応じて光の強さを変える赤色のランプが光る書庫。心臓は生命の証。心臓の鼓動と共に電球が真っ赤に明滅される書庫の中で生きている実感といつか止まる瞬間があることを意識させられます。ボルタンスキーは、2010年から世界中から無数の匿名個人の心臓音をサンプリングし、香川県の豊島に「心臓音のアーカイブ」として恒久的に展示するプロジェクトを開始。そこから提供された”誰か”の心臓音です。

dsc09027・新館ギャラリー『眼差し』
部屋の中には様々な人の目元がプリントされた大きなヴェールが何層にも上から吊るされ、風に揺らめいています。ヴェールをめくりながら進むとまた大きな眼差しに囲まれ、見つめられ、不思議な世界をさまよっている感覚になります。『内部』に引き込むインスタレーションを実践するボルタンスキーの哲学が反映された作品。

そのヴェールの中心には金色の大きな山が。『帰郷』という作品タイトル。大量の古着を金色のエマージェンシー・ブランケットで覆い、かつて存在したものの『不在』を暗示しています。この作品をはじめて発表した当時のメキシコは裕福さと背中合わせに殺人事件が多発するという危険があり、”金”は災いの元にもなるという表裏を持ち主不明の大量の古着を金色のブランケットで覆うというこの作品で表現しています。

dsc09033・新館ギャラリー 『アニミタス』
チリの2000mを超える高知にある地上で最も乾燥し、その為に最も星座がはっきり見える場所と言われるアタカマ砂漠に数百の日本製風鈴の音が鳴り響く「アニミタス」。タイトルの「アニミタス」とは、スペイン語で「小さな魂」を表す言葉です。風鈴一つ一つが名もない死者の魂のようです。

dsc09038・新館ギャラリー 『ささやきの森』
『アニミタス』の裏に回ると、今年完成した豊島の山中にあるインスタレーション『ささやきの森』が映っています。山の中を歩き風鈴を設置していくことで神社のような聖地になっています。
荒涼とした大地から聞こえていた風鈴の音が、森の中の風鈴の響きに変わります。遠く離れた2つの『巡礼の地』を重ね合わせ、ボルタンスキーはいつか消滅していくこの地と人々の死を関連付けているようでした。

展示点数は多くはないもののボルタンスキーの”死”に対する哲学なようなものを感じた回顧展。
「人々」の生死、記憶。いつか忘れ去られていく人々の死の切なさみたいなものを様々な手法で表現していました。

クリスチャン・ボルタンスキー 「アニミタス-さざめく亡霊たち」
・2016年9月22日~12月25日
・東京都庭園美術館

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